環境改善・熱中症対策
近年、猛暑日の増加により、業務中に熱中症で倒れる労働者が全国で相次いでいます。炎天下の建設現場や高温多湿な工場など、暑熱環境下で従業員が発症した場合、企業として労災申請すべきか判断に迷うケースも少なくありません。実は熱中症は、業務起因性と業務遂行性が認められれば労働災害として認定される疾病です。しかし、認定要件や申請手続き、企業に課される安全配慮義務までを正確に把握している担当者は多くはないでしょう。 本記事では、厚生労働省が定める熱中症の労災認定基準や実際の認定事例、申請の流れと補償内容、そして企業が負う法的リスクと現場で実践したい対策までを網羅的に解説します。 目次 熱中症は労災(労働災害)に認定されるのか? 熱中症が労災として認定される具体的な要件 【事例】熱中症が労災認定された実際のケース 熱中症で労災申請するための具体的な手続きと補償内容 企業に求められる安全配慮義務と法的リスク 現場で実践したい熱中症対策 熱中症の労災に関するよくある質問 まとめ 熱中症は労災(労働災害)に認定されるのか? 業務中に発症した熱中症は、一定の要件を満たせば労働災害として認定されます。ここでは、労災の対象となる熱中症の基本と、認定に必要な法的根拠・要件について順に解説します。 要件の名称 概要 具体的な確認内容 一般的認定要件 業務と発症の因果関係 業務上の原因が存在し、個人的な理由による発病ではないこと 医学的診断要件 医学的な事実の確認 医師による熱中症の診断や、作業環境の温湿度条件の把握 参考:厚生労働省 通達「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」 参考:職業病リスト|厚生労働省 業務中に発症した熱中症は労災対象 労働災害における熱中症は、労働基準法施行規則別表第1の2第2号8に定める「暑熱な場所における業務による熱中症」に該当する疾病として扱われます。生活環境よりも著しく高温な場所や、身体的負荷が大きい作業に従事した結果として発症した熱中症は、業務起因の疾病と判断されやすくなります。具体的には、炎天下の建設現場や道路工事現場、冷房設備が不十分な工場や倉庫、加熱炉の周辺、通気の悪い屋内厨房などが代表例です。一方、空調が整った一般オフィスで発症したケースなど、作業環境と発症の関連性が薄い場合には業務起因性が認められにくくなります。現場では、気温・湿度・作業時間・作業内容を日々正確に記録し、労災認定時の判断材料として残しておきましょう。 熱中症は労基法で業務上疾病と定められている 労働基準法第75条および同法施行規則別表第1の2に「業務上の疾病」として明記されているため、熱中症は労災補償の対象です。具体的には、別表第1の2第2号8「暑熱な場所における業務による熱中症」がその根拠条文にあたります。労働基準監督署は、労災認定の判断にあたって、まず「業務遂行性(事業主の支配・管理下で発症したか)」と「業務起因性(業務が原因で発症したか)」を確認し、その上で疾病該当性について「一般的認定要件(作業内容・作業環境と熱中症との因果関係が明らかであること)」と「医学的診断要件(作業環境の把握、症状・体温の観察、他疾患との鑑別診断が行われていること)」の2つの観点から審査します。両方を満たして初めて労災保険給付の対象となる仕組みです。労務担当者は申請時の書類準備や労基署への説明を円滑に進められるよう、こうした法的枠組みを理解しておきましょう。 参考:業務上疾病に関する関係法令 業務との因果関係を証明する「一般的認定要件」 一般的認定要件とは、熱中症の発症が業務に起因していることを、作業条件および作業環境の観点から客観的に確認するための基準です。労災認定にあたっては、まず「業務遂行性(事業主の支配・管理下で発症したか)」を確認した上で、「業務起因性(作業が原因で発症したか)」を一般的認定要件によって審査します。 実務上は、次の3つの観点を総合的に判断するとされています。 作業環境が暑熱な状態(高温・多湿、直射日光下等)であったこと 当該作業条件(作業強度、連続作業時間、休憩の頻度等)から熱中症が発症するのが自然と認められること 持病や飲酒・睡眠不足など個人的事情が主原因ではないこと たとえば、就業時間中に炎天下で連続作業をしていた最中に倒れたケースは、業務との因果関係を認めやすい典型例です。逆に、休憩時間中の私的行動や、前日からの深酒による脱水が主因と判断された場合は、要件が否定されます。判断を裏付けるため、作業日報・WBGT値等の現場記録・気象データ・目撃者の証言などを整理して残しておきましょう。 参考:厚生労働省「業務上疾病の認定基準及び関連通達集」 症状と作業環境の医学的裏付けである「医学的診断要件」 医学的診断要件は、労働者に生じた症状が医学的に熱中症であると診断でき、かつ発症時の作業環境が熱中症を引き起こしうる条件であったかを確認するものです。具体的には、めまい・大量発汗・筋けいれん・意識障害・体温上昇などの症状が診療録や診断書で裏付けられ、当日の気温・湿度・輻射熱・作業強度が高温多湿環境と評価できることが求められます。特に暑さ指数(WBGT)の実測値は、環境条件を客観的に示す有力な根拠となります。労災申請時には、医師の診断書に加え、WBGT測定記録・作業日誌・現場の気象データ・使用していた保護具の状況などを添付することで、認定審査を円滑に進めやすくなるでしょう。 参考:令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します|厚生労働省 熱中症が労災として認定される具体的な要件 労災認定で重視されるのが「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの概念です。ここでは各要件の意味と、厚生労働省が示す「暑熱な場所」の考え方、労災認定されないケースまで具体的に解説します。 判断基準 定義 熱中症における具体例 業務遂行性 事業主の管理下で業務に従事していること 作業中、または業務指示による待機中の発症 業務起因性 業務と発症の間に因果関係があること 猛暑の屋外作業による体温上昇と水分不足 参考:「熱中症」は労災が適用される? - NIKORO / 新潟雇用労働相談センター 参考:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定」パンフレット 業務遂行性と業務起因性の判断基準 業務遂行性とは、労働者が会社の指示に従って仕事をしている最中に発症したかどうかが問われるものです。例えば、以下のような場合に認められます。 就業時間内に作業をしている最中 会社の指示で移動している最中 指定された休憩場所で待機している最中 その他、事業主の管理下にあると認められる状況 業務起因性とは、「その仕事をしたから熱中症になった」という直接的なつながりを示すものです。判断のポイントは以下です。 認められやすいケース 炎天下で長時間の交通整理を行っていた場合 高温の炉の近くで作業をしていた場合 否定される可能性が高いケース 休憩時間中に個人の自由な意思で激しい運動をして熱中症になった場合 厚生労働省が定める「暑熱な場所」とは 厚生労働省が労災認定の要件として定めている「暑熱な場所」とは、単に気温が高いだけの場所ではありません。職場が一般的な生活環境よりも暑い、作業による身体的負荷が高いなどで、熱中症になりやすい状態にあったと推定される場所を指します。具体的には、直射日光が強く当たる屋外や、風通しが悪く熱がこもりやすい屋内、発熱する機械の周辺などが該当します。また、温度だけでなく湿度や輻射熱も加味した「暑さ指数(WBGT)」が、暑熱な場所であるかを客観的に判断する指標として利用されます。WBGT値が基準を超えている環境で作業を行わせていた場合、労働基準監督署は「熱中症を発症する危険性が高い環境であった」と判断しやすくなります。 参考:厚生労働省「業務上疾病の認定基準及び関連通達集」 労災認定されないケース 業務中に熱中症を発症したとしても、労災と認められないケースも存在します。発症の原因が業務環境ではなく、労働者の個人的な事情に大きく依存していると判断された場合です。たとえば、前日に極度な深酒をして脱水状態に陥っていた場合や、著しい睡眠不足など、体調管理の欠如が主な原因であると考えられるケースが該当します。さらに、持病(糖尿病や高血圧など)が悪化して倒れた場合、熱中症によるものなのか、あるいは持病の自然な悪化によるものなのかの判別が難しくなります。医師の診断において、職場の暑さが原因ではなく持病の増悪であると判断された場合には、業務起因性が否定され労災として認定されません。 参考:令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します|厚生労働省 【事例】熱中症が労災認定された実際のケース 熱中症による労働災害は、屋外の建設現場だけでなく、屋内の工場でも発生しています。ここでは実際に労災認定された事例を業種別に紹介し、認定のポイントを整理します。 参考:令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します|厚生労働省 屋外清掃作業での労災認定事例 社会保険労務士法人の事例報告によると、8月上旬に40代の従業員が道路の清掃作業を行っていた際、熱中症を発症して労災認定されたケースがあります。この従業員は、午前中に体調の違和感を覚えながらも作業を継続し、午後になって汗が止まらなくなり意識が朦朧として病院に搬送されました。当日の最高気温は36度という過酷な環境でした。この事例では、清掃作業中という「業務遂行性」が明確であり、気温36度という高温環境下での作業が直接的な原因であるという「業務起因性」が認められました。屋外での重労働において、異常を感じたにもかかわらず作業を続けた結果、重症化してしまった典型的な事例と言えるでしょう。 工場(屋内)での労災認定事例 屋内であっても熱中症のリスクは高く、製造現場での死亡災害事例も報告されています。ある工場では、50代の男性作業員が炉の近くで軽作業を行っていた際に倒れ、死亡しました。現場では危険性の認識が薄く、WBGT(暑さ指数)の測定も行われていませんでした。さらに、本人に持病があり体調が万全ではなかったにもかかわらず、通常通り業務を続行させたことが問題視されました。工場内が十分な熱中症対策を講じていない「暑熱な場所」であったこと、体調不良の従業員に対する配慮が欠けていたことが指摘されています。屋内での作業であっても、機械からの排熱や風通しの悪さによって熱中症を発症する危険性があることを示しています。 熱中症で労災申請するための具体的な手続きと補償内容 従業員が業務中に熱中症を発症した際は、速やかな労災申請が欠かせません。ここでは、労働基準監督署への申請手順と必要書類、労災保険で受けられる主な補償の内容について解説します。 補償の種類 概要 対象となるケース 療養補償給付 医療機関での治療費を全額補償 労災指定病院等で治療を受ける場合 休業補償給付 休業中の賃金の約8割を支給 療養のため労働できず、賃金を受けない日が4日以上の場合 参考:厚生労働省「療養(補償)等給付の請求手続」パンフレット 参考:労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました(令和7年1月1日施行)|厚生労働省 参考:労働災害が発生したとき |厚生労働省 熱中症発生時に企業が取りたい初動対応 従業員が業務中に熱中症を発症した場合、企業はまず被災者の症状に応じた応急処置と救急搬送を最優先で行います。涼しい場所へ移動させ、身体を冷やし、水分・塩分を補給しつつ、意識障害や高体温が見られる際は即座に119番通報を行いましょう。受診時には、業務中の発症であることを医療機関に明確に伝え、健康保険証を使わずに労災扱いで受診できるよう窓口で申告します。可能であれば労災指定医療機関を選ぶと、後の給付手続きがスムーズになります。並行して、発症時の作業内容・時刻・気温・湿度・WBGT値・目撃者などの記録を残しておくと、後の労災申請と認定審査で重要な資料として役立つでしょう。 労災申請の流れと必要書類 熱中症の労災申請は、被災した労働者本人または企業が、所轄の労働基準監督署へ請求書を提出して進めます。治療費については、療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)を、労災指定病院を経由して労基署へ提出するのが基本です。指定外の医療機関を受診した場合は、いったん治療費を立て替えた上で様式第7号を用いて費用請求します。休業補償を請求する際は、休業補償給付支給請求書(様式第8号)に、平均賃金の算定資料や医師の証明を添えて提出します。なお、令和2年12月25日から労災保険関係の請求書・届出様式は押印が不要となり、記名のみで受け付ける取扱いとなっています(事業主・診療担当者・産業医の押印も含めて不要)。企業は事業主証明欄に被災状況を正確に記載する役割を担うため、事実関係の聞き取りと社内での書類保管を徹底しましょう。 参考:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」 参考:厚生労働省「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」 労働者死傷病報告の提出義務 労働安全衛生規則第97条に基づき、業務中の熱中症で労働者が休業した場合、企業は労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出する義務を負います。休業4日以上のケースでは遅滞なく、休業1〜3日の軽症であっても四半期ごとにまとめて報告する必要があります。原則として厚生労働省の入力支援サービスやe-Govを介した電子申請で提出します(電子申請が困難な場合は、当分の間、改正後の新様式による書面提出も可能)。報告を怠ったり、私傷病として健康保険を使わせて処理したりした場合は「労災隠し」と見なされ、労働安全衛生法第100条違反として50万円以下の罰金(同法第120条第5号)の対象となります。企業名の公表による社会的信用の失墜も懸念されるため、軽症だからと自己判断せず、迷った際は所轄の労基署へ相談しましょう。 参考:労働安全衛生規則 | e-Gov 法令検索 療養(補償)給付と休業(補償)給付の内容 労災認定を受けた労働者は、療養補償給付として治療費の全額支給を受けられます。労災指定病院で治療する場合は窓口負担なしで診察・投薬・入院が可能で、指定外医療機関の場合も費用が後日償還されます。治療のため働けず賃金を受け取れないときは、休業4日目から休業補償給付が支給され、給付基礎日額の60%に加え特別支給金20%が上乗せされ、実質的に平均賃金の約80%が補償されます。3日目までの待期期間については、業務災害の場合、労働基準法上、事業主が平均賃金の60%以上を支払う義務があります。療養と休業補償を組み合わせることで、被災労働者は治療と生活の両面で安心して回復に専念できるでしょう。 参考:福島労働局/各種法令・制度・手続き/労災保険関係 重症化した場合の障害補償給付・遺族補償給付 熱中症は重症化すると後遺障害や死亡につながる可能性があります。重症化した場合は追加の労災給付が存在します。治療後も一定の障害が残った場合には障害補償給付が支給され、障害等級(第1級〜第14級)に応じて年金または一時金が支払われます。等級認定は医師の障害診断書と労基署の審査で決まり、重い等級ほど年金として長期に給付されます。万が一、熱中症が原因で労働者が死亡した際には、生計を維持されていた遺族に対して遺族補償年金または遺族補償一時金が支給されるほか、葬祭料も別途給付されます。企業側は、重症化事案での説明責任と再発防止策の提示が求められるため、事実関係を丁寧に記録するよう努めましょう。 参考:労災保険とは | 山梨労働局 参考:国立障害者リハビリテーションセンター(厚生労働省所管)「社会保障制度の活用②(労災保険給付)」 企業に求められる安全配慮義務と法的リスク 企業には、労働契約法に基づき従業員の健康を守る「安全配慮義務」が課されています。ここでは義務の法的根拠と、違反した際に問われる民事・行政・刑事の各リスクを整理します。 責任の種類 主な根拠法令 具体的な処分・請求内容 民事責任 労働契約法第5条、民法第415条・第709条 被災者・遺族からの損害賠償請求(過去に1億円超の判例あり) 行政責任 労働安全衛生法 労基署による是正勧告・指導、書類送検、企業名公表 刑事責任 刑法(業務上過失致死傷罪) 罰金・懲役、経営者個人の刑事訴追 安全配慮義務の法的根拠と対象範囲 安全配慮義務とは、企業が従業員の生命と健康を危険から守るために必要な措置を講じる義務です。労働契約法第5条に明文化されており、熱中症対策の文脈では以下の3つが基本要素とされています。 作業環境を良好に保つ配慮 作業内容や労働時間を適切に管理する配慮 健康状態に応じて業務を調整する配慮 加えて、労働安全衛生法および関連省令が具体的な指針となります。特に2025年(令和7年)6月1日からは労働安全衛生規則の改正により、暑熱作業における熱中症の早期発見・重篤化防止のための体制整備や手順作成等が事業者に罰則付きで義務化されました。義務の範囲は正社員に限らず、パート・アルバイト・派遣・請負作業員にも及ぶため、契約形態を問わず現場で働くすべての人を対象に対策を講じる必要があります。 参考:職場における熱中症予防情報 参考:京都労働局(厚生労働省)「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」 違反時に問われる民事・行政・刑事リスク 安全配慮義務違反と判断された場合、企業は民事・行政・刑事の三方面から責任を追及されるおそれがあります。民事では、過去には熱中症による死亡事故で数千万円規模の賠償を命じた判例も存在します。行政上では、労働安全衛生法違反として労働基準監督署から是正勧告や指導を受け、悪質な場合には書類送検・企業名の公表に至ることもあります。さらに刑事責任として、業務上過失致死傷罪が問われるケースも否定できません。金銭的損失に加え、社会的信用の失墜や採用力の低下といった長期的な打撃も大きくなると考えられるため、平時からの対策徹底が求められます。 参考:令和7年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します|厚生労働省 参考:酷暑のサウジ出張中に熱中症で死亡 勤務先に賠償命令、最高裁で確定:朝日新聞 現場で実践したい熱中症対策 熱中症事故を防ぐには、現場での予防策を組織的に実行することが求められます。ここでは環境管理・作業と健康の管理・教育と緊急体制の3つの視点から、実践したい具体的な対策を解説します。 対策の分類 具体的な取り組み内容 期待される効果 環境管理 WBGT値の測定、日除け・遮熱ネット設置、スポットクーラーやファン付きウェアの導入 暑熱環境そのものの改善と体感温度の低減 作業・健康管理 高温時間帯を避けた作業計画、休憩の義務化、始業前の体調確認、水分・塩分補給の時間管理 身体的負担の軽減と個人リスクの早期把握 教育・緊急対応 暑熱期前の研修、救急連絡フロー・搬送先リストの整備、ヒヤリハット事例の共有 発症の予防と発症時の被害最小化 WBGTを測って暑熱環境を改善する 熱中症対策の第一歩は、作業場所の暑熱環境を客観的に把握することです。厚生労働省は「暑さ指数(WBGT)」の活用を推奨しています。WBGT計を用いて現場の実測値を確認し、基準値を超える場合は作業中止や作業時間の短縮などの判断を行いましょう。屋外現場では日除けテントや遮熱ネットの設置、屋内作業場ではスポットクーラー・大型扇風機・排熱ダクトの整備で、輻射熱や滞留熱を減らす工夫が求められます。作業服も、通気性の高い素材やファン付きウェアを支給することで体感温度を下げる工夫ができるでしょう。休憩スペースには冷房を効かせた場所を確保し、氷嚢や経口補水液を常備するなど、いつでもクールダウンできる環境を整えることが重要です。 参考:STOP!熱中症 クールワークキャンペーン/厚生労働省|厚生労働省 作業計画と労働者の健康状態を管理する 作業内容そのものを見直すことも、熱中症予防に効果的です。高温時間帯を避けた作業計画への変更、こまめな休憩の義務化、二人一組でのバディ制導入など、身体的負担を軽減する仕組みを整備しましょう。労働者個々の健康管理では、始業前の体温・体調確認、睡眠状況や飲酒歴のセルフチェック、糖尿病や高血圧などの持病を持つ従業員への配慮が欠かせません。水分と塩分の補給は本人任せにせず、15〜20分ごとに一口ずつ摂るよう時間管理し、経口補水液やスポーツドリンクを現場で無償提供する運用が推奨されます。作業中の顔色や発汗量の変化を管理者が観察し、異変を感じたら即座に作業を中断させる判断基準も明確化しておきましょう。 事前教育と緊急対応体制を整備する 現場に対策を根付かせるためには、事前教育と緊急時の対応体制の整備が必要です。年度初めや暑熱期前に、管理者と作業員の双方に対して、熱中症の症状・応急処置・WBGTの読み方・水分補給ルールなどを扱う研修を実施しましょう。緊急時に備えて、社内では以下の項目を文書化し、全員が共有できる状態にしておくのがおすすめです。 救急連絡フロー 搬送先医療機関のリスト AEDや冷却用氷嚢の設置場所 現場責任者と本社の連絡経路 加えて、ヒヤリ・ハット事例を収集して再発防止に活かす仕組みや、毎朝の朝礼でその日のWBGT予測と対策を共有する運用も推奨されます。組織全体で継続的にPDCAを回すことが、事故ゼロへの近道となるでしょう。 熱中症の労災に関するよくある質問 熱中症と労災の関係は制度が複雑で、実務でも判断に迷う場面は少なくないでしょう。ここでは労務担当者から特に多く寄せられる質問を取り上げ、厚生労働省の規定に基づき解説します。 質問内容 回答の要点 注意すべきポイント 軽症でも労災報告は必要か 休業4日以上なら所定の様式が必要 報告を怠ると労災隠しに該当する恐れ 通勤中の熱中症は労災になるか 合理的な経路での通勤中なら通勤災害の可能性あり 個人的な寄り道中の発症は対象外 軽症でも労災申請(労働者死傷病報告)は必要ですか? 労働者が熱中症を発症した際、軽症だからといって会社が独断で労災の手続きや労働基準監督署への報告を省略するのは大変危険です。労働安全衛生規則第97条に基づき、労働者が業務上の負傷や疾病で休業した場合には、労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署長に提出する義務があります。休業が4日以上の場合は遅滞なく所定の様式で提出し、休業1日から3日の場合も四半期ごとに報告を行わなければなりません。なお、令和7年1月1日からは報告事項が改正され、原則として電子申請(e-Gov)による提出が義務化されています(パソコン端末がない等の事情がある場合は当分の間、書面での報告も可能)。もし、会社が報告義務を怠ったり、私傷病として健康保険を使わせるように指示したりした場合、いわゆる「労災かくし」と見なされ、50万円以下の罰金が科される可能性があります。企業としての信用を大きく損なう結果にもつながるため、判断に迷ったときは所轄の労働基準監督署に相談しましょう。 参考:労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました(令和7年1月1日施行)|厚生労働省 参考:労働者死傷病報告 参考:労働安全衛生規則 | e-Gov 法令検索 通勤中の熱中症も労災(通勤災害)になりますか? 業務中だけでなく、通勤途中に発症した熱中症も、一定の要件を満たせば「通勤災害」として労災保険の対象となる可能性があります。通勤災害と認められるためには、労働者が住居と就業場所の間を、合理的な経路および方法で移動している最中の出来事であることが前提となります。たとえば、炎天下の中を徒歩や自転車で会社に向かっている途中で熱中症に倒れた場合は、通勤に起因する災害として認定される可能性があります。ただし、通勤経路から外れて個人的な用事(趣味の店に立ち寄る等)に及んだ場合には、逸脱・中断中およびその後の移動は通勤と認められません。一方、日用品の購入、病院での診察、選挙、家族の介護など「日常生活上必要な行為」を最小限度の範囲で行うためのやむを得ない逸脱・中断であれば、経路に戻った後は再び通勤として扱われます。個別の認定は事案ごとの判断となるため、迷ったときは所轄の労働基準監督署に相談しましょう。 参考:労働者災害補償保険法 | e-Gov 法令検索 参考:厚生労働省「労災保険給付の概要」(労災保険給付の概要リーフレット) まとめ この記事の要点を振り返ります。 業務中の熱中症は、業務遂行性と業務起因性を満たせば労災として認定される 労災認定には「暑熱な場所での作業」と「医師による医学的診断」の両要件が必要となる 労災申請では、療養補償給付や休業補償給付など被災労働者への手厚い補償が受けられる 休業が発生した際は軽症でも労働者死傷病報告の提出が義務付けられている 企業は安全配慮義務を負い、違反時は民事・行政・刑事の重い責任を問われるリスクがある 現場のWBGT測定や教育体制の整備を進め、熱中症ゼロの職場づくりに今日から取り組んでいきましょう。 熱中症は、重症化すれば従業員の健康被害にとどまらず、労災認定・行政指導・ライン停止など、事業継続そのものに影響するリスクへと発展しかねません。だからこそ、水分補給や声かけといった個人の注意だけに頼るのではなく、企業として“予防できる環境”を整えることが求められます。FactoryResQ³では、工場や作業場で発生する暑さの原因を、建物構造・断熱性能・通気・排熱といった環境面から丁寧に整理し、従業員を守るために本当に必要な対策を一緒に検討します。まずは無料相談で、貴社の現場ごとの課題と優先順位を明確にするところから始めてみませんか。 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環境改善・熱中症対策
「熱中症対策が義務化されると聞いたが、自社は対象になるのか」「具体的に何を準備すればいいのか」と不安を感じていませんか?2025年(令和7年)6月1日から労働安全衛生規則が改正され、一定の暑熱環境下での企業の熱中症対策が努力義務から法的義務へと変わりました。対応を怠ると罰則や作業停止命令の対象となるため、経営者や人事労務・安全衛生担当者は早急な体制づくりが求められます。 この記事では、法改正の背景と変更点、暑さ指数(WBGT)などの対象条件、企業が整備すべき「報告体制」「対処手順」「関係者への周知」の3つの具体策、違反時の罰則やリスクまでをわかりやすく解説します。 目次 2025年6月より職場の熱中症対策が義務化 熱中症対策が義務化される対象作業の条件 義務化に伴い企業が対応したい3つの具体策 熱中症対策の義務違反による罰則と企業リスク まとめ 2025年6月より職場の熱中症対策が義務化 2025年(令和7年)6月1日から、厚生労働省が所管する労働安全衛生規則の一部が改正され、企業に対する熱中症対策が法的に義務付けられました。ここでは、制度改正が行われた理由や、これまでとの違いについて詳しく説明します。 項目 従来までの状況 2025年6月以降の対応 位置づけ 飲料水や塩分の備えなど基本的な対策は既に法的義務、初期対応に関してはガイドラインに基づく努力義務 労働安全衛生規則に基づく法的義務 企業の対応 基本的な対策(水分・塩分の備え等)は法令に基づき実施、報告体制や対処手順の整備は事業者の自主的な取り組みに委ねられていた 報告体制の整備や手順の作成が必須 違反時の扱い 明確な刑事罰などの規定はなし 罰則や作業停止命令の対象となる 参考:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について(リーフレット)」 法改正の背景と目的 職場における熱中症対策が義務化された背景には、近年の地球温暖化にともなう深刻な労働災害の増加が挙げられます。厚生労働省が発表しているデータによると、職場での熱中症による死傷者は高い水準で推移しており、毎年多くの命が失われている状況と言えるでしょう。事態を重く見た国は、従業員の健康被害を防ぐために明確なルールを設けました。初期症状の放置や対応の遅れが重症化につながるケースが多いとされるため、事業者が責任を持って予防措置を講じることが強く求められています。国の方針として、すべての労働者が安全に働ける環境を整えることが今回の改正の大きな目的となります。 参考:職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行) 参考:職場の熱中症対策で是正勧告 257事業所に 8月までの3か月間 | NHKニュース 従来の取り組みから法的対応への変更点 飲料水や塩分の備えといった基本的な対策は、改正前から労働安全衛生規則に基づき法的に義務付けられていました。ただし、熱中症の疑いがある労働者への報告体制の整備や、悪化防止手順の作成といった初期対応に関する具体的な規定は設けられていませんでした。今回の改正によって、これらが特定の環境下における正式な義務として明文化されました。事業者はガイドラインを参考にしつつも、法令で定められた基準をクリアする具体的な行動を起こす必要があります。初期対応の仕組みづくりが新たに義務付けられたことで、経営者や人事労務担当者は自社の体制を急いで見直す必要があるでしょう。 参考:職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行) 熱中症対策が義務化される対象作業の条件 新しい制度において、まずはどのような作業環境が義務化の対象となるのかを正確に把握しておきましょう。ここでは、対象となる基準や条件について、具体的な数値を交えて解説します。 判定基準の種類 具体的な条件数値 留意すべきポイント 環境の基準 暑さ指数28度以上または気温31度以上 湿度や輻射熱も影響するため数値の定期確認が必要 作業時間の基準 連続1時間以上または1日合計4時間超 短時間作業でも時間が延びる可能性を考慮する 作業場所の範囲 屋外および屋内のすべての労働環境 空調のない工場や倉庫なども対象に含まれる 参考:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」 暑さ指数(WBGT)と気温の基準値 熱中症対策が義務となる環境の基準には、暑さ指数(WBGT)と気温という二つの指標が用いられます。具体的には、WBGTが28度以上、または気温が31度以上となる環境下での作業が対象です。WBGTとは、気温に加えて湿度・輻射熱・気流の四つの要素を総合的に評価した指標で、体感に近い熱ストレスを数値で示します。注意したいのは、気温が31度に達していなくても、湿度が高ければWBGTが28度を超え、対象となる点です。実際に東京都では、2024年6月から10月の間に、WBGTが28度を超えた日が86日あり、気温31度を超えた75日を上回りました。WBGTは環境省の熱中症予防情報サイトで地域ごとに確認できるため、日々の数値をチェックする体制を整えておきましょう。 参考:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは? 対象となる作業時間の基準 環境の基準に加えて、作業の継続時間も対象を判断する重要な要素です。前述の暑熱環境下で、連続して1時間以上、または1日の合計で4時間を超える作業を行うことが見込まれる場合に、対策が義務となります。ポイントは「見込まれる」という表現で、実際に作業した結果ではなく、事前に予定されている作業内容にもとづいて判断されます。現場の責任者は、当日の作業スケジュールと気象予報を照らし合わせ、基準を超えそうかを前日までに見極めておく必要があります。短時間の軽作業なら対象外となる場合もありますが、急な予定変更で作業が延びることも想定し、余裕を持った準備を計画しておくと安心でしょう。 環境と時間の両方を満たす作業が対象 見落としやすいのが、環境の基準と作業時間の基準の「両方」を満たす作業が義務化の対象になるという点です。たとえばWBGTが28度以上でも、連続1時間未満かつ1日合計4時間以内の短い作業であれば、対象には含まれません。逆に長時間の作業でも、涼しい環境であれば対象外となります。つまり「暑い環境」と「一定以上の作業時間」が重なったときに、報告体制や対処手順の整備が義務となる仕組みなのです。自社が対象かどうかを判断する際は、この2つの条件をセットで確認しましょう。判断に迷う場合は、実測したWBGT値と当日の作業計画を突き合わせ、記録に残しておくと、後々の説明にも役立つはずです。 屋内作業も対象になる点に注意 熱中症と聞くと炎天下の建設現場を思い浮かべることが多いかもしれませんが、今回の義務化は屋内外を問わず、条件を満たすすべての作業が対象です。空調のない工場や倉庫、熱を発する機械や炉の周辺などは、屋外に劣らない高温多湿環境になりやすく、警戒が必要です。厚生労働省の統計でも、令和6年の職場における熱中症の死傷者は1,257人にのぼり、その約4割を建設業と製造業が占めています。窓を閉め切った作業場や風通しの悪い空間は湿度が上がりやすく、WBGTが基準値を超えやすくなります。オフィス以外で従業員が働くすべての事業者は、業種を問わず屋内外の温度と湿度を計測する習慣を身につけましょう。 参考:厚生労働省「2024年(令和6年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」 義務化に伴い企業が対応したい3つの具体策 対象となる環境で作業を行う場合、事業者は従業員を守るために具体的な行動を起こす必要があります。ここでは、法令によって定められた3つの主要な義務内容について、順番に解説していきます。 義務の項目 主な目的 行いたいアクション 報告体制の整備 初期症状の早期発見と迅速な情報伝達 緊急時の連絡網を作成し、指揮系統を明確にする 対処手順の作成 症状の重篤化防止とスムーズな救護 応急措置のマニュアル作成と近隣病院のリスト化 関係者への周知 現場全体の安全意識向上とルール浸透 朝礼での説明やポスター掲示で全員に情報を共有する 参考:厚生労働省(島根産業保健総合支援センター掲載)「令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)が公表されました」 早期発見のための報告体制の整備 1つ目の義務は、熱中症の初期症状をいち早く察知するための報告体制を、事業場ごとにあらかじめ定めることです。具体的には、自覚症状のある作業者本人と、異変に気づいた周囲の作業者が、その旨をすぐに報告できるよう、連絡先や担当者を明確にしておく必要があります。責任者が不在の場合の代理連絡先や、複数の関係者が入る現場での指揮系統も、事前に決めておくと混乱を防ぐ助けになります。熱中症は本人が異変に気づきにくいため、作業員同士が声を掛け合い、少しでもおかしいと感じたら遠慮なく報告できる風土づくりも求められます。誰が・誰に・どう伝えるかを具体的に固めておくことが、重症化を防ぐ第一歩となるでしょう。 重篤化を防ぐための措置内容と実施手順の作成 2つ目の義務は、実際に熱中症が疑われる作業者が出た場合に備え、症状の悪化を防ぐための措置内容と実施手順をあらかじめ定めることです。厚生労働省は、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察や処置、そして事業場の緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先・所在地などを、手順として定めておくことを求めています。マニュアル化し、誰でもすぐ行動できるよう備えておきましょう。症状が重い場合に救急車を呼ぶ判断基準や、受け入れ可能な近隣病院の情報も整理しておくと安心でしょう。現場の正確な住所を記載したシートを用意しておけば、救急要請もスムーズに行えるはずです。 定めた体制・手順の関係者への周知 3つ目の義務は、これまでに整えた報告体制と実施手順を、対象作業に関わるすべての関係者へ周知することです。法令では、体制や手順を「定める」だけでなく「関係作業者に周知する」ところまでが義務とされており、作成して終わりでは要件を満たせません。効果を発揮させるためには、現場の作業員はもちろん、管理監督者や下請け企業のスタッフなど、同じ環境で働く全員がルールを理解している必要があります。朝礼やミーティングでの定期的な説明に加え、ポスターやリーフレットで視覚的にも注意を促すのがおすすめです。とくに新しく現場に入る作業員には、作業開始前に必ず共有する仕組みを設けておきましょう。 熱中症対策の義務違反による罰則と企業リスク 法的な義務である以上、定められた対策を怠ると企業は相応の罰則を受けることになります。ここでは、違反した場合に想定される具体的な罰則やリスクについて解説します。 リスクの種類 発生する可能性のあるペナルティ 影響の大きさ 刑事罰 6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 法人および責任者が法的な処罰を受け社会的信用が低下する 行政処分 労働基準監督署による作業の全部または一部停止 業務の停止により工期遅延や多額の経済的損失が生じる 民事上の責任 安全配慮義務違反に基づく多額の損害賠償請求 訴訟による金銭的負担とブランドイメージの深刻な失墜 拘禁刑や罰金などの刑事罰 改正された労働安全衛生規則に違反し、必要な熱中症対策を講じなかった場合、刑事罰が科される可能性が生じます。具体的には、6ヶ月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金という厳しい処分が規定されています。現場の責任者個人だけでなく、法人そのものに対しても適用される場合があるため、会社全体の問題として捉える必要があります。経営層はコンプライアンスの観点から、現場の対策状況を厳しくチェックする責任を負っているのです。 参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索 労働基準監督署による作業の停止命令 刑事罰に加えて、労働基準監督署などの行政機関から直接的な指導や処分を受けるリスクも存在しています。現場の安全管理が著しく不十分であると判断された場合、作業の全部または一部を停止するよう命じられるケースがあります。建設現場や工場において業務が停止すれば、工期の遅れや納品の遅延に直結し、取引先からの信用を大きく失う原因になりかねません。また、重大な労働災害を引き起こした企業として社名が公表されれば、企業のブランドイメージにも回復困難な傷がつく可能性もあります。 参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索 安全配慮義務違反にともなう損害賠償 労働契約法において、企業は従業員が安全に働ける環境を整える「安全配慮義務」を負っているという前提があります。熱中症対策を怠った結果として従業員が倒れ、健康被害が生じた場合、安全配慮義務に違反したとみなされる可能性が高いです。被災した従業員やその家族から民事訴訟を起こされ、高額な損害賠償を請求される事例も過去に発生しています。裁判となれば金銭的な負担だけでなく、対応に追われる時間や労力も膨大なものとなり、企業の存続に関わる事態に発展するかもしれません。従業員の命と健康を守ることは、結果として企業自身を守ることにつながるという認識を持ちましょう。 参考:労働契約法 | e-Gov 法令検索 まとめ この記事の要点をまとめます。 2025年6月から特定の暑熱環境下における企業の熱中症対策が法的義務となった 対象はWBGT28度以上または気温31度以上で、連続1時間・1日合計4時間超の作業 屋外だけでなく、空調のない工場や倉庫などの屋内作業も対象になる 企業は「報告体制の整備」「対処手順の作成」「関係者への周知」を行う必要がある 違反すると拘禁刑や罰金、作業停止命令、損害賠償などのリスクがある 従業員の命と企業の信用を守るため、現場の状況に応じた体制づくりを早急に進めていきましょう。 2025年6月からの義務化を受けて、報告体制の整備や対処手順の作成、関係者への周知に取り組もうとしても、自社の暑さの原因がつかめず、どこから着手すればよいか迷ってしまう現場も少なくないでしょう。FactoryResQ³では、工場や作業場で暑さが生じる原因を一つずつ整理し、法対応をきっかけとして無理なく進められる環境改善策をご提案しています。まずは現状を把握するところから、お気軽にご相談いただけます。費用はかかりませんので、専門のスタッフと一緒に具体的な進め方を考えていきましょう。義務化への対応を安心して進めるために、下記のフォームから無料相談をご活用ください。 お気軽にお問い合わせください 無料相談
環境改善・熱中症対策
自社の熱中症対策はこれで十分なのか、と不安を感じている総務・人事や安全衛生のご担当者は多いのではないでしょうか?気候変動で猛暑日が続くなか、職場での熱中症リスクは年々高まっており、2025年6月からは労働安全衛生規則の改正で企業の熱中症対策が罰則付きで義務化されました。 この記事では、義務化の背景やWBGTなどの対象条件、違反時の罰則、企業に求められる「体制整備」「手順作成」「周知徹底」の3本柱を分かりやすく解説します。あわせて、WBGT測定やウェアラブルデバイスといった具体的な対策手法、活用できる補助金・助成金、すぐに導入しやすい対策グッズも紹介します。 目次 企業の熱中症対策が2025年6月から義務化へ 企業に義務付けられた熱中症対策の3本柱 企業が導入したい熱中症対策の具体的手法 熱中症対策に活用できる補助金・助成金 企業がすぐに準備しやすい熱中症対策グッズ まとめ 企業の熱中症対策が2025年6月から義務化へ 気温の上昇に伴い、職場における熱中症対策は企業の経営課題として重要性を増しています。ここでは、法改正によって企業に求められるようになった対策の全体像を解説します。 項目 内容 施行時期 2025年6月1日 対象となる作業条件 WBGT28度以上または気温31度以上の環境下での特定作業 義務化の主な内容 体制整備、対応手順の作成、従業員への周知 違反時の罰則 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 熱中症対策が義務化された背景 熱中症対策の義務化には、近年の気候変動による猛暑の常態化と、職場での労働災害の増加が関わっているとされます。厚生労働省の統計によると、令和6年の職場での熱中症による死傷者数は1,257人で、前年比約14%増となり、死亡者数は3年連続で年間30人以上(令和4年は30人、令和5年・令和6年は各31人)となっています。特に問題視されたのが、初期症状の放置や対応の遅れによって重症化・死亡に至るケースの多さです。従来の法令には、早期発見や重症化防止のための明確な規定がありませんでした。事態を重く見た厚生労働省が労働安全衛生規則を改正し、事業者に対策を義務付ける方針を決定したのです。 参考:厚生労働省「2024年(令和6年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」 熱中症対策が義務となる作業条件 今回の義務化は業種や企業規模を問わず、一定の作業条件を満たすすべての事業者が対象です。具体的には、WBGTが28度以上、または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれる作業が該当します。WBGTとは、気温だけでなく湿度や日射・輻射熱などを取り入れた指標です。屋外の建設現場に限らず、空調の効きにくい屋内工場なども対象となり得ます。出張先であっても、基準を満たす環境で対象となる作業を行う場合は対象に含まれる点に注意しましょう。 参考:厚生労働省(秋田労働局)「職場における熱中症対策の強化について(労働安全衛生規則第612条の2)」 熱中症対策を怠った企業に科される罰則と行政処分 規定された熱中症対策を怠った企業には、厳しい罰則が科される可能性があります。今回義務付けられた措置は、労働安全衛生法第22条第2号にもとづくものです。違反した場合、同法第119条第1号により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されると定められています。 両罰規定によって法人に対しても50万円以下の罰金が科される場合があり、都道府県労働局長や労働基準監督署長による使用停止命令を受けるケースもあります。従業員の重症化や死亡を招けば、損害賠償請求や社会的信用の失墜といった、さらに大きなリスクにもつながりかねません。 参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索 企業に義務付けられた熱中症対策の3本柱 法改正によって企業に義務付けられた熱中症対策は、大きく分けて3つの要素から構成されています。熱中症のリスクを早期に発見し、重篤化を防ぐための具体的なアクションプランです。企業規模に関わらず、対象となる作業を行うすべての事業者が対応しなければなりません。 対策の柱 具体的な実施内容 体制整備 早期報告を行うための連絡先や担当者の決定 手順作成 作業中止や身体冷却、医療搬送などの具体的な手順の策定 関係者への周知 定めた体制や手順を対象となる従業員全員に共有 参考:厚生労働省(島根産業保健総合支援センター掲載)「令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)が公表されました」 熱中症の異変を早期に報告するための体制整備 熱中症による重大な事故を防ぐには、初期症状の段階で速やかに報告できる体制を整えることが求められます。 法改正では、以下の内容が義務づけられました。 ①熱中症の自覚症状がある作業者本人と ②熱中症のおそれがある作業者を見つけた周囲の人が、その旨を報告するための連絡先や担当者を、事業場ごとにあらかじめ定めること 現場の責任者や安全衛生管理者が窓口となり、報告を受けたらすぐ次の行動に移れる指揮系統を築きましょう。体調不良を言い出しにくい職場では発見が遅れる傾向にあります。体制が機能すれば早期対応が可能となり、重篤化のリスクを大きく減らせるはずです。 熱中症発生時の対応手順を定めるマニュアル作成 報告を受けた後、誰がどう動くのかという具体的な手順を文書化しておくことも、企業に課された重要な義務です。 厚生労働省は、以下の内容を手順としてあらかじめ定めるよう求めています。 ①作業からの離脱 ②身体の冷却 ③必要に応じた医師の診察や処置 ④事業場における緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先・所在地の整理 たとえば意識がはっきりしない場合は迷わず救急車を呼ぶなど、明確な基準を設ける必要がります。手順が定まっていれば、緊急時にも現場がパニックになりにくく的確な対処につなげられるでしょう。ただし、マニュアルは一度作って終わりにせず、定期的に見直しするのが推奨されています。 定めた体制と手順を従業員へ周知徹底 体制を整備し手順を作成しても、現場で働く従業員に知られていなければ運用につながりません。定めた連絡網や対応手順を関係する作業者全員に周知することも、義務化の内容に含まれています。朝礼での定期的な呼びかけや、作業現場の目立つ場所へのポスター掲示など、従業員がいつでも確認できる状態をつくりましょう。外国人労働者がいる職場では、多言語での掲示や説明といった配慮も必要です。熱中症の初期症状を周知すれば、従業員自身の予防意識が高まり、より安全な職場環境の構築につながるはずです。一人ひとりの当事者意識が、事故のない職場づくりの鍵となるのです。 企業が導入したい熱中症対策の具体的手法 法令で定められた管理体制の構築に加えて、現場レベルでの物理的な環境改善や健康管理の手法を取り入れることが熱中症予防につながります。マニュアルを作っても、働く環境そのものが過酷であればリスクは下がりません。ここでは、企業が実際に導入を検討したい具体的な対策方法を解説します。 対策の手法 期待される効果 WBGT値の測定 作業環境の危険度を客観的に評価できる 水分・塩分補給と休憩所の整備 体温の上昇を防ぎ、脱水症状を予防する ウェアラブルデバイスの活用 従業員の体調変化をリアルタイムで把握できる 参考:職場における熱中症予防情報 参考:令和8年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します|厚生労働省 WBGT値の測定と作業環境の改善 熱中症のリスクを客観的に判断するためには、作業場所ごとにWBGT値(暑さ指数)を継続して測定するのがおすすめです。専用の測定器で環境の危険度を数値化し、結果をもとに適切な作業時間の設定や冷房設備の導入を判断します。たとえば、作業場所にスポットクーラーや大型の業務用扇風機を設置することで、局所的にWBGT値を下げられるでしょう。屋外の作業においては、直射日光を遮るためのテントを張るなどの工夫を取り入れることで、従業員の身体にかかる負担を和らげられます。費用はかかりますが、長期的に見れば従業員の生産性向上や離職防止といったメリットにつながる投資と言えるでしょう。 こまめな水分塩分補給と休憩場所の確保 作業の合間に無理なく体調を回復できるよう、休憩場所の環境を整えることも企業の大切な役割となります。空調が効いた涼しい休憩室を用意するだけでなく、従業員がいつでも水分や塩分を摂取できるような仕組みづくりが求められます。休憩所に飲料の自動販売機やウォーターサーバーを設置したり、塩飴や経口補水液を常備したりする企業も増えています。のどの渇きを感じる前に定期的な水分補給を促すルールを設けることで、自覚症状のないまま脱水状態に陥ることを防ぐ効果が期待できます。前日の飲酒が脱水を引き起こしやすいことなど、日常生活の注意点についても情報提供を行うと、より効果的でしょう。 ウェアラブルデバイスを活用した健康管理 近年では、テクノロジーを活用した先進的な熱中症対策を取り入れる企業も登場しています。手首や衣服に装着するウェアラブルデバイスを使用することで、従業員の心拍数や体表面の温度をリアルタイムで計測可能です。測定されたデータはクラウド上で管理され、熱中症の危険性が高まった場合には本人や管理者にアラートで通知されることが多いです。システムが導入できれば、規模の大きな工場や複数に分かれた建設現場でも、管理者の目視だけに頼らずに済むみ、従業員の体調変化をいち早く察知できるようになるでしょう。プライバシーに配慮しつつ、労働災害を防ぐための新しい手段として検討してみてはいかがでしょうか。 熱中症対策に活用できる補助金・助成金 熱中症対策として空調設備の導入や休憩所の整備を進めるには、相応の費用がかかります。企業の負担を軽減するために活用したいのが、国や自治体が用意する補助金・助成金です。ここでは、企業が利用を検討したい代表的な制度を紹介します。 高年齢労働者向けの「エイジフレンドリー補助金」 熱中症対策の代表的な支援制度が、厚生労働省のエイジフレンドリー補助金です。高年齢労働者の労働災害防止を目的とした制度で、60歳以上の労働者を常時1名以上雇用する中小企業事業者が対象となります。移動式のスポットクーラーや空調(ファン付き)作業服、ウェアラブル機器による健康管理システムといった熱中症予防に役立つ設備の導入費用が補助対象に含まれ(WBGT計や通常の扇風機・エアコンは対象外)、補助率は原則2分の1、上限額は100万円です。ただし機器の導入前に交付申請を行う必要があり、交付決定前に発注・購入した経費は対象外となる点に注意しましょう。申請期間や対象要件は年度ごとに変わるため、活用を検討する際は厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認するのがおすすめです。 参考:エイジフレンドリー補助金|厚生労働省 生産性向上と両立できる「業務改善助成金」 生産性向上とあわせて熱中症対策を進めたい企業には、厚生労働省の業務改善助成金が選択肢となるでしょう。事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、同時に生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に、費用の一部を助成する制度です。冷房設備や換気設備の導入、休憩所の整備などが生産性向上に資すると判断されれば、補助の対象となり得ます。補助率は賃金の引き上げ状況に応じて最大4分の3から5分の4、上限額は賃上げコースや労働者数によって最大600万円程度まで設定されています。賃上げが前提となる制度のため、自社の人件費計画とあわせて検討するとよいでしょう。 参考:業務改善助成金|厚生労働省 自治体独自の補助金・助成金 国の制度に加えて、事業所の所在地によっては自治体独自の補助金・助成金を活用できる場合があります。都道府県や市区町村が、空調設備の導入や暑さ対策グッズの購入、業界向けガイドラインの策定などを対象に、独自の支援制度を設けているケースがあります。自治体の制度は「市内に主たる事業所があること」「申請前に購入していないこと」「予算上限に達し次第終了」といった条件が付きやすい傾向にあります。国の制度と併用できるかどうかも制度ごとに異なるため、まずは自社が所在する自治体のホームページや補助金検索サイトで、利用できる制度がないかを早めに確認しておくことをおすすめします。 企業がすぐに準備しやすい熱中症対策グッズ 大がかりな設備投資に踏み切る前でも、身近なグッズを取り入れることで熱中症のリスクは着実に下げられます。ここでは、比較的低コストで導入しやすく、すぐに現場へ配備できる代表的な対策グッズを紹介します。 身につけて体を冷やす冷却グッズ・空調服 作業者が直接身につけて体温の上昇を抑えるグッズは、導入のハードルが低く効果を実感しやすい対策と言えるでしょう。ファンで衣服内に風を送り込む空調服やファン付きベストは、屋外の建設現場や空調の効きにくい工場で広く使われています。あわせて、首元を冷やすネッククーラーや、水にぬらして気化熱で体を冷やす冷却タオル、保冷剤を入れられるベストなども手軽な選択肢です。いずれも一人あたりの単価が比較的安く、必要な人数分をそろえやすい点がメリットです。装着の手間が少なく作業の妨げになりにくいものを選ぶと、現場での定着が進みやすいでしょう。まずは負担の大きい作業から優先的に配備していくのがおすすめです。 水分・塩分をこまめに補給できるアイテム 熱中症予防の基本である水分・塩分補給を促すには、いつでも手軽に摂取できる環境を整えることが大切です。休憩所にウォーターサーバーや自動販売機を設置するほか、塩飴やタブレット、経口補水液、スポーツドリンクの粉末などを常備しておくと、作業の合間に無理なく補給できるはずです。特に大量に汗をかく作業では、水だけでなく塩分を同時に補える経口補水液がおすすめです。こうしたアイテムは比較的安価で、まとめ買いしておけばシーズンを通して活用できるため、費用対効果の高い対策になり得ます。 暑さを可視化・軽減する環境対策グッズ 作業環境そのものの暑さを抑え、危険度を把握するためのグッズも準備しておきたいところです。WBGT指数計(暑さ指数計)を作業場に設置すれば、気温だけでは分からない熱中症リスクを数値で確認でき、作業の中止や休憩の判断に役立ちます。あわせて、局所的に涼をとれるスポットクーラーや大型の業務用扇風機、屋外の直射日光を遮る日よけテントやミストファンなども、比較的手軽に導入できる環境対策です。大規模な工事を伴わずに設置できるものが多く、リスクの高い場所からピンポイントで対策を強化できるでしょう。可視化と環境改善を組み合わせることで、より実効性の高い熱中症対策につながるはずです。 まとめ この記事の要点をまとめます。 熱中症対策は2025年6月から罰則付きの法的義務となった 対象はWBGT28度以上または気温31度以上で、一定時間行う作業 企業は「体制整備」「対応手順の作成」「従業員への周知」の3本柱が必須 WBGT測定や水分補給、ウェアラブルデバイスなどで予防効果を高められる 補助金・助成金や対策グッズを活用し、コストを抑えて導入できる 従業員の命と健康を守るため、自社に合った安全な職場づくりを今すぐ始めましょう。 工場や倉庫の熱中症対策は、注意喚起や水分補給といった従業員側の対応だけでは限界があります。屋根や外壁からの輻射熱、空調効率の低下、生産設備からの排熱など、作業環境そのものが暑さの根本原因となっているケースも少なくありません。FactoryResQ³では、現場ごとの状況を丁寧にヒアリングし、費用対効果や工事による稼働への影響も踏まえた上で、貴社に最適な対策プランをご提案します。「どこから着手すべきかわからない」という段階でも問題ありません。まずは無料相談で、現場の課題と優先度を一緒に整理するところから始めてみませんか。 お気軽にお問い合わせください 無料相談
環境改善・熱中症対策
夏場の建設現場や製造工場で、作業員の熱中症事故をどう防げばよいか、頭を悩ませていませんか。労働安全衛生規則の改正により、企業には法令に基づいた熱中症対策の徹底がこれまで以上に強く求められる時代となりました。 この記事では、現場監督や安全衛生管理者の方に向けて、WBGT値を活用した作業計画の立て方から、ファン付きウェアをはじめとする効果的な対策グッズ、他社が実践している対策事例、そして緊急時の正しい対応手順までを網羅的に解説します。 目次 現場の熱中症対策はなぜ重要なのか? 現場で徹底したい熱中症対策の基本 現場作業員を守るための熱中症対策グッズ 作業員の体調を守るには個人管理も必要 熱中症が発生してしまった際の緊急対応手順 現場の熱中症対策に関する企業事例 まとめ 現場の熱中症対策はなぜ重要なのか? 現場における熱中症対策は、作業員の命を守るために避けて通るのは難しい課題と言えるようになりました。ここでは、特定の現場でリスクが高まる理由と、社会的な背景について解説します。 重症度と分類 主な症状の現れ方 確認できる兆候 I度(軽症) めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉の硬直 作業中にふらつく足がつると訴える顔面が蒼白になる II度(中等症) 頭痛、吐き気、体がだるい、極度の虚脱感 休憩しても疲れが取れない自力で動くのが困難になる III度(重症) 意識障害、全身のけいれん、異常な高体温 呼びかけに反応しない自力で水分を飲めないまっすぐ歩けない 参考:厚生労働省(滋賀労働局)「職場における熱中症対策が義務化されます」 参考:熱中症予防のための情報・資料サイト | 厚生労働省 参考:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」 建設・製造現場で熱中症リスクが高い理由 気温が高い状況での屋外作業や、熱がこもりやすい屋内での業務は、作業員の体温調節機能を著しく低下させると考えられています。特にヘルメットや長袖の作業着、安全靴などを着用している場合、汗が蒸発しにくく体内に熱が蓄積しやすくなるとされます。 加えて、重い資材を運ぶ、足場の悪い場所で作業を行うなどの重労働が重なることで、体力を消耗しリスクはさらに高まるでしょう。作業に集中するあまり水分補給のタイミングを逃してしまうことも、重大な健康被害を引き起こす要因の一つと考えられます。 日差しの強い夏季だけでなく、湿度が高い梅雨の時期や、体が暑さに慣れていない初夏にも発症するケースが報告されています。現場の環境は天候や時間帯によって常に変化するため、一定の基準を設けて継続的に監視する姿勢が求められるのです。 労働安全衛生規則改正による対策強化の背景 厚生労働省の報告によると、職場における熱中症の死傷者数は高い水準で推移しており、中でも建設業や製造業が大きな割合を占めています。状況を改善するため、企業には作業環境の管理や作業員の健康把握がこれまで以上に強く求められるようになりました。 管理者には、単なる努力目標としてではなく、具体的な予防計画を策定し実行する責任が課せられています。労働者の命を守ることは、企業の社会的責任を果たす上でも必要な取り組みとなるのです。 法的な義務化が進む中で、対策を怠った場合は企業の信頼を損なうだけでなく、重大な責任を問われる可能性も否定できません。現場の状況に合わせた適切なガイドラインを整備し、全従業員に対して周知徹底を図ることが事故を防ぐための第一歩となるでしょう。 参考:厚生労働省「2024年(令和6年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」 現場で徹底したい熱中症対策の基本 個人の努力だけに頼るのではなく、現場全体の環境を整えることが熱中症予防の土台作りに役立ちます。数値に基づいた客観的な管理手法と、休息環境の整備について確認していきましょう。 WBGT値(暑さ指数) 警戒レベルの目安 推奨される対策と行動基準 31度以上 危険 原則として激しい作業は中止し、涼しい場所で待機して体温を下げる 28度〜31度未満 厳重警戒 激しい作業は避け、こまめに水分と塩分を補給しながら慎重に作業する 25度〜28度未満 警戒 定期的に長めの休憩を取り、互いの体調変化に注意を払う 25度未満 注意 通常の作業を行うが、適宜水分補給を心がけ無理をしない 参考:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは? 参考:厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」 WBGT値(暑さ指数)の測定方法と現場への設置 環境省が公表するWBGT値は、気温・湿度・輻射熱を総合的に算出する、熱中症の危険度を客観的に把握できる指標です。現場では黒球式の熱中症指数計などを、直射日光の当たる作業エリアと日陰の休憩エリアの両方に設置し、1時間ごとを目安に定期的に数値を記録する体制が利用的です。 気象庁や環境省が発表する地域ごとの予測値も参考にしながら、作業開始前に現場責任者が数値を確認し、全作業員へ共有する仕組みを整え、事故を未然に防げるように動きましょう。 WBGT値の警戒レベルに応じた作業計画への反映 WBGT値が25度未満なら「注意」(一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある)、25〜28度未満は「警戒」として積極的な休憩と水分・塩分補給、28〜31度未満は「厳重警戒」として作業内容の見直しと積極的な水分・塩分補給、31度以上は「危険」として原則作業中止が求められます。 現場監督は数値が基準を超えた時点で即座に作業を一時中断する判断権限を持ちます。工程よりも安全を優先する姿勢を全員に周知しましょう。数値と対応行動をセットにした掲示物を休憩所に貼り出すのもおすすめです。 休憩所の環境整備と設備の工夫 休憩所は直射日光を避け風通しの良い場所を選定し、可能な限りエアコンやスポットクーラーを備えた屋内空間を用意します。ミストシャワーや大型扇風機、遮熱シートを活用したテントなども、屋内設備を整えにくい現場でおすすめの代替手段です。 休憩所内には給水設備や塩分タブレット、保冷剤を常備し、作業員が靴を脱いでヘルメットを外し、体を横にして休める広さを確保しましょう。短時間でも効率的に体温と疲労を回復させる環境をつくれるはずです。 休息の頻度とタイミングの設計 休憩は昼休みなどまとまった時間だけでなく、午前・午後それぞれに30分程度の短い休憩を追加し、作業を1時間おきに区切って小まめに体を冷やす運用がおすすめです。WBGT値が厳重警戒・危険レベルに達した際は、通常より休憩間隔を短縮し、作業と休息の比率を柔軟に見直す判断が必要です。 休憩のタイミングをあらかじめ朝礼で共有しておくことで、作業員自身が我慢せずに休憩を取りやすい雰囲気を現場全体で醸成することにもつながります。 現場作業員を守るための熱中症対策グッズ 環境の整備と併せて、作業員個人を直接的に暑さから守るアイテムを活用するのがおすすめです。ここでは、ウェアとして身につけるタイプと、携帯・設置して使うタイプの2種類に分けて、近年注目されている対策グッズを紹介します。 対策グッズの種類 主な機能と特徴 活用メリットと効果 ファン付きウェア 服の内部に外気を取り込み、汗を蒸発させて体を継続的に冷やす 屋外や空調のない屋内でも体温上昇を効果的に抑え、体力の消耗を防ぐ 冷却インナーシャツ 接触冷感素材や吸汗速乾素材を使用し、肌をドライな状態に保つ 重ね着をしても蒸れにくく、作業中の動きやすさを損なわない 塩分補給タブレット 汗で失われた塩分やミネラルを噛むだけで手軽に摂取できる ポケットに入れて持ち運べるため、作業の合間にすぐ補給できる スポットクーラー 特定の場所に冷風を送り、局所的に気温と湿度を下げる 休憩所や固定された作業場所の環境改善に大きく貢献し快適性を保つ 参考:職場における熱中症予防情報 「ファン付きウェア」による体温上昇の抑制 作業着の内部に小型ファンで外気を取り込むファン付きウェアは、汗の気化熱を利用して体を継続的に冷やせる点が特長です。長袖・ヘルメット・安全靴といった防護装備を着用する建設・製造現場では、通常よりも熱がこもりやすいため、能動的な冷却手段が効果的と考えられます。 バッテリー式で長時間稼働するタイプも多く、屋外・屋内を問わず幅広い現場で活用できるでしょう。会社側が費用を負担して支給することで、作業員個人の判断に頼らない安定した対策運用が可能になります。 「冷却インナー」との併用による効果向上 接触冷感・吸汗速乾素材を使用した冷却インナーシャツは、ファン付きウェアと重ね着することで冷却効果がさらに期待できます。肌に密着する構造でありながら蒸れを抑えるため、重ね着による不快感を軽減できる点も特徴です。 単体でも一定の効果はありますが、ファン付きウェアと組み合わせることで、送り込んだ外気が肌面に効率よく触れるようになり、体感的な涼しさが向上するでしょう。導入コストが比較的低いため、まず着手しやすい対策の一つと言えるはずです。 「ヘルメット装着型送風機」と「ネッククーラー」の追加導入 ヘルメットに取り付けられる小型送風機や、首元を集中的に冷やすネッククーラー、保冷剤入りのアイスベストなどは、ウェア型グッズと併用することでさらに快適性を高められると考えられます。特に首元は太い血管が集まる部位であり、集中的に冷やすことで全身の体感温度を効率よく下げる効果が期待できます。 比較的安価で既存の作業着を変えずに追加できるため、予算が限られる現場でも導入しやすいアイテムでしょう。 「スポットクーラー」による休憩所・作業スペースの環境改善 特定の場所に冷風を送るスポットクーラーは、休憩所や固定された作業スペースに設置することで、局所的に涼しい環境をつくる効果が期待できます。個人に装着するグッズとは異なり、現場全体・複数人が同時に恩恵を受けられる点がメリットです。 特に屋内で空調設備が整っていない工場や倉庫では、休憩エリアにスポットクーラーを設置するだけでも、休憩時の体温回復効率が改善するはずです。ただしスポットクーラーは冷風と同時に排熱・排水を生じる構造のため、密閉空間で使用すると室温がかえって上昇する場合があります。 設置時は排熱ダクトを室外や別空間へ導く、換気を確保するといった対応をあわせて行い、作業動線を考慮した位置に設置しましょう。 作業員の体調を守るには個人管理も必要 グッズによる環境面の対策と併せて、作業員一人ひとりの体調を日々把握し、無理のない働き方を促す個人管理の仕組みづくりも求められます。ここでは、水分・塩分補給の運用方法と、朝礼を活用した体調確認について解説します。 水分・塩分補給の具体的な運用方法 汗で失われる塩分やミネラルを補うには、水だけでなくスポーツドリンクや経口補水液の活用が効果的です。手軽に摂取できる塩分タブレットは、ポケットに入れて持ち運べるため作業の合間にすぐ補給できる利点があります。 現場の複数箇所に飲料水と塩分タブレットを常備し、作業員が我慢せずいつでも自由に補給できる環境を整えましょう。「喉が渇く前に飲む」ことを朝礼などで周知し、個人任せにしない組織的な補給習慣を定着させるのがおすすめです。 朝礼で体調確認と個人の健康状態を把握する 熱中症は当日の体調に左右されることも多いため、朝礼の場で睡眠不足や体調不良がないかを一人ひとり確認するのがおすすめです。前日の飲酒や朝食の未摂取、二日酔いなどは脱水傾向を強め、熱中症のリスクを一段と高める要因になり得ます。 顔色や受け答えの様子から異変を感じた場合は、無理に作業へ入れず早めに休ませる判断が事故防止の鍵となるでしょう。管理者だけでなく作業員同士が体調の変化に気づき合える雰囲気づくりも、現場全体の安全性を高める上でおすすめです。 熱中症が発生してしまった際の緊急対応手順 万全の対策を講じていても、熱中症が発生してしまうリスクはゼロにはなりません。いざという時に慌てず行動できるよう、初期対応と搬送の判断基準を確認しましょう。 対応フェーズ 現場で取るべき具体的なアクション 状態を確認する際の重要なチェック項目 発生直後の対応 涼しい場所への迅速な避難と衣服の調整 意識ははっきりしているか、自力でしっかりと歩けるか 現場での応急処置 太い血管が集まる部位の冷却と積極的な水分補給 吐き気はないか、むせずに自分で水分を飲み込めるか 医療機関への搬送判断 症状が改善しない場合は迷わず救急車を手配する 呼びかけに対する反応が鈍くないか、手足のけいれんがないか 発生後の事後対応 発生状況の詳細な記録と現場全体への注意喚起 当日のWBGT値はいくらだったか、事前の休憩は十分に足りていたか ステップ1:症状を確認し涼しい場所へ避難させる 作業員がめまいやだるさを訴えた場合は、作業を直ちに中断させ、エアコンの効いた部屋や風通しの良い日陰などの涼しい場所へ移動させましょう。意識がはっきりしているか、自力でしっかりと歩けるかをこの時点で確認し、少しでも異変があれば軽視せず対応を進めます。 周囲の作業員は対象者を一人きりにせず、移動中も声をかけ続けて反応の変化を継続的に確認しましょう。判断に迷う場合は、症状が軽く見えても重症化を前提とした対応を取るのがおすすめです。 ステップ2:身体を冷却し水分・塩分を補給する 涼しい場所へ移動させた後は、衣服を緩めて風通しを良くし、首の回りや脇の下、太ももの付け根など太い血管が集まる部位を保冷剤や冷たいペットボトルで集中的に冷やすことが推奨されます。並行して、吐き気がないか、むせずに自分で水分を飲み込めるかを確認しましょう。 意識がはっきりしており自力で水分を摂れる場合は、経口補水液などを少しずつ飲ませて回復を待ちます。この段階での冷却と水分補給の速さが、その後の回復や重症化の分かれ目になることもあるため、迅速な対応を心がけましょう。 ステップ3:重症度を見極め医療機関へ搬送する 自力で水分を飲めない場合や、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、手足にけいれんが見られるといった場合は、重症化している可能性が高いため、直ちに救急車を呼びましょう。判断に迷った際は、軽症と決めつけず速やかに救急要請を行うことが命を守る上で大切です。 救急隊が到着するまでの間も、冷却などの応急処置を中断せず継続しましょう。搬送の要否を現場の誰か一人に委ねず、複数人で状況を確認し合う体制を普段から整えておくと、いざという時に迅速な判断がしやすくなります。 ステップ4:状況を記録し再発防止につなげる 事後には、発生した日時や当時のWBGT値、作業内容、休憩の取得状況などの詳細を社内で記録し共有することが求められます。当日の休憩は十分に足りていたか、事前の体調確認は行われていたかといった点も併せて振り返ることで、対策の抜け漏れを把握しやすくなるでしょう。 記録した内容は現場全体で共有し、同様の事故を防ぐための再発防止策を協議する材料として活用します。運用ルールの見直しを一過性で終わらせず、次のシーズンや他の現場にも展開していく仕組みづくりが、安全な職場環境の維持につながります。 現場の熱中症対策に関する企業事例 厚生労働省が公表している企業別の取組事例をもとに、現場で実際に採用されている工夫を紹介します。実際に運用されている対策として参考にしてみましょう。 参考:導入しやすい熱中症対策事例紹介|職場における熱中症予防情報 参考:マニュアルダウンロード|職場における熱中症予防情報 作業環境の改善に関する取り組み事例 休憩場所が遠い現場では、周辺にスポットクーラーを常時稼働させた仮設のビニールハウスを設置し、作業中の休憩場所として活用している例があります。また、積み下ろし先などで休憩場所を確保できない場合に、冷房の効いたトラックの運転席を臨時の休憩場所として使う運送業・建設業の例も報告されています。 高層ビルの解体作業では、事務所脇・解体中の建物内・作業場所近くの木陰など複数箇所に休憩場所を設置している事例もあります。屋外の建設事務所前に飲料の自動販売機を設置し、水分補給をしやすくしている企業も見られます。 体調管理と緊急時対応に関する取り組み事例 体調管理の面では、管理者がSNSのグループ発信機能を用いて、その日の熱中症の危険度を作業者全員の携帯電話へ即時に一斉通知し、翻訳アプリを併用することで外国人労働者にも母国語で情報を伝えている企業があります。また、頭痛や吐き気、顔色の悪さ、ろれつが回らない、尿の色が濃いといった兆候が見られた場合は躊躇なく救急車を要請する方針を定め、あらかじめ施主にも同意を得ている例も報告されています。 作業前・休憩後・作業後の体調確認を習慣化し、声を掛け合いやすい雰囲気づくりやKY(危険予知)活動を充実させることも、重篤化を防ぐ土台として位置付けられています。 まとめ この記事の要点を振り返ります。 WBGT値を基準にした作業計画の策定と、定期的な休憩の確保が現場対策の土台となる ファン付きウェアや冷却インナー、ネッククーラーなど個人向けグッズを組み合わせて体温上昇を抑える スポットクーラーや遮熱テントで休憩所の環境を整え、作業員が短時間で体力を回復できるようにする 朝礼での体調確認と、水分・塩分をいつでも補給できる仕組みで個人管理を徹底する 発症時は「涼しい場所への避難→身体の冷却と水分補給→重症時は救急要請→記録と再発防止」の手順を全員で共有する 法改正への対応と作業員の安全確保を両立させるため、本記事の内容を自社の現場運用に今日から取り入れていきましょう。 工場や作業場で熱中症対策を考えるとき、空調がなかなか効きにくい、屋根から強い熱が伝わってくる、天井付近に熱気がこもりやすいなど、悩みの原因は現場ごとに大きく異なります。どこにでも当てはまる一律の方法を選ぶよりも、それぞれの現場条件をふまえて対策を判断していくほうが、実際の効果につながりやすいと言えるでしょう。 FactoryResQ³では、工場や作業場の状況を丁寧に確認したうえで、稼働を止めにくい現場でも取り組みやすい暑さ対策を無料でご相談いただけます。自社の現場に合う方法を一度検討してみたい方は、下記からお気軽にお問い合わせください。 お気軽にお問い合わせください 無料相談